白い吐息
「かっこ悪…」
しゅんとする琴に気付き、関口先生は軽く彼女の肩を撫でた。
「疲れが出たのよ。最近、教頭にこき使われてばかりでしょ。あんた頑張り屋さんだしね…」
「違うんです…」
「ん?」
「私、動揺して気絶したんです」
「動揺?」
「同姓同名だったから…」
琴は立ち上がって窓から校庭を眺めた。
息を吹き掛けると窓に霜ができる。
「…誰が?」
関口先生は琴の背中に問い掛けた。
「白居真人…」
そう言いながら、琴は窓に彼の名前を書いた。
「へぇ…珍しい」
「ですよね。そんな有りふれた名前じゃないのに…漢字までまったく一緒なんです…」
「で、誰と一緒なの?」
琴は窓に頬をくっ付ける。
ひんやりと冷たく気持ちいいのに、ジリジリと痛い。
まるで、さっきの胸の痛みのようだった。
「高校時代の英語の先生です…」
白居真人
名前を思い浮べるだけで、切なくなる…