なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
琢斗にバトンを渡すと、あいつは真っ直ぐ前を見つめ真剣な顔で走り出した。
いつでもこの人は一生懸命で真剣で
そんな琢斗の大きくて頼もしい背中を見つめながら、私はまた胸が苦しくなるのを感じた。
私が走り終わると同時に、亜子がかけよってくる。
「夢乃!大丈夫?!」
転んで真っ黒になった私の服の汚れをほろって、
「お疲れ。よく最後まで走ったね。」
優しい笑顔と言葉をかけてくれる。
いっそのこと責めてくれたほうが楽なのに、でも、亜子はそれをしない。
きっと、今の私の心理状態を分かってるんだ。
目を競技に戻すと、もうリレーはアンカー勝負になっていた。
最下位だった私たちのチームはいつの間にか4位にまで上がっていて、
アンカーのヨウが物凄いスピードでさらに一人を追い抜き、最終的に3位でゴールした。
「みんなかっこいいね。」
亜子の視線の先を見つめながら、私は言葉は発さずにただ首を縦にふる。
その時私は、私たちの視線の先が重なるのを感じていた。