なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
なんで、私が体調悪いって分かったの?
たぶん、誰も気づいてなかったのに。
何とも思っていなくても、琢斗は私に優しくしてくれるの?
その優しさはきっと、みんなに向けた優しさと一緒だね…
ヨウや亜子に見られながら、私は琢斗におぶられて救護室に向かう。
琢斗の背中はおっきくてあったかくて、あいつの広い背中のぬくもりを感じながら、このまま救護室になんてつかなければいいのにって思った。
この背中と琢斗を独り占めしたいよ。琢斗の笑顔も優しさも、全部私だけのものにしたい。
琢斗の背中に顔をうずめ、泣きそうになるのをごまかすように、しがみつく手の力を強くした。
こんな気持ちなくなっちゃえばいいって思ったけど、なくしたくない。
諦めようと思ったけど、やっぱり無理だよ。
ギュッ
さらに強く、琢斗のTシャツを掴む。
きっと、私の気持ちはバレバレだ。
『伝えなきゃ気持ちは伝わらない』
そう言うけど。
じゃあ、伝える前から伝わらなかった私の気持ちはどこへ行くの?
好き
好き
好き。
琢斗の背中に向けて、心の中で何度も訴える。
届かなかった想いが、どうかこのまま消えてしまいませんように…