なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
俺はその後、急いで保健室に向かった。
ガラッ
保健室のドアを開けるともう琢斗の姿はなく、日が落ち始めた保健室は薄暗くて、びっくりするくらい静かだった。
奥のカーテンが閉まっている。
そこに夢乃の上靴が置いてあるのを確認して、ゆっくりカーテンを開ける。
そこには、真っ白な布団にくるまって静かに寝息をたてている夢乃の姿があった。
夢乃を起こさないように、息を潜めてゆっくりと近づく。
「ごめんな…」
夢乃を見下ろし、静かに呟いた。
気づいてあげられなくて、ごめん…
額には、びっしょりと汗。それによく見ると目が腫れて、クマができている夢乃の顔。
きっと、昨日のことが原因だろう。
お前はやっぱり、聞いていたんだな…
申し訳ない気持ちと、気づけなかった自分への悔しさ。
夢乃の額の汗をタオルで拭い、俺はそばに置いてあった椅子に腰を下ろし、ガクッとうなだれた。