なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
side遠哉
恋愛って面倒だなぁと、つくづく思う。
楽な恋愛ばかりならいいのに、なんて思いつつ
面倒な恋愛にのめり込んでしまっているバカが、
この俺だ。
―――どうしてこんな面倒なやつを好きになったんだろう。
横を歩くこいつ、源月亜子の横顔を眺めながら
ふとそんなことを思う。
「私の顔に何かついてる?」
俺の視線に気づいた亜子が、不機嫌そうに聞いてくる。
「見てねーし。お前の気のせいじゃねぇの?」
焦って少し上擦った声でそう返すと
「…あっそ。」
ぶっきらぼうにそう言って、亜子はまた遠くを見つめた。
正直こいつとは長い付き合いだけど、時々何を考えてるのか分からない時がある。
みんなで話をしている時でも、時々ふと視線がどこかに行ってしまう時があるし、
放課後も一人で教室に残って、どこかを見つめている。
ずっと俺は亜子のことを見てきたのに、亜子の心の中が全く見えないんだ。