なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
side遠哉
今の俺は、不機嫌だ。
いや、亜子のことになるといつも俺は、怒ったり喜んだり、一喜一憂して忙しい。
今日ヨウと亜子がなにやら親密な話をしているのを見て、俺は気が気じゃなかった。
…でもそんな俺より不機嫌なのが、隣を歩いているこいつ。
「…言いたいことあるなら、言えば?」
二人の間に流れる重い空気に嫌気がさしたのか、亜子が怒ったような口調で言ってくる。
「別に俺は…」
亜子の顔色を伺うように、俺は思わずそう返してしまう。
あー…
今日こそは強くいこうと思ったのに、情けない…
「あっそ。」
そんなはっきりしない俺の態度を見て、亜子はそそくさと先に歩いて行ってしまう。
距離がどんどん開いていく。
そしてそんな2人の間を埋めるように、ポツポツと降り出す雨。
2人の無言の時間を、雨の音が消していく。
こんな2人の関係に耐えきれなくなって、
「亜子っ!!」
俺は駆け出し、思わず前を行く亜子の手を掴んだ。