なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
でも、亜子の返事は俺の予想に反していた。
「いいよ。」
「へ?」
その予想外の返事に、俺は間抜けな声を出してしまう。
「ほんとに?いいの?」
「うん。その代わり、何か奢ってよ。」
そして亜子は、無理やりに笑顔を作って前に向きを変え、再び歩き出す。
俺はうまく頭が整理できなかった。
こんなにあっさりOKをもらえるとは思えなかったし、何より亜子の胸の内が分からなかった。
俺は笑う。
嬉しいはずなのに、本当には笑ってなくて。
亜子も笑う。
本当の気持ちを隠して。
そんな2人の間には、再び距離ができる。
それでも明後日、亜子に全て伝えよう。
いったいどんな言葉を選んだら、君に100パーセントの想いが伝わるんだろう。
いつのまにか雨はやんで、空は薄むらさき色に色を変えていた。
明日からいよいよ、本祭が始まる。