なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
「お前もさ、それスカート短いんじゃない?」
声のした方に向きを変えると、いつのまにか隣にいたヨウ。
「そうかなぁ…普段の制服と変わらないよ。」
「そうかもしれないけどさ、お前も少し危機感持ったら?下心丸出しで見てくる奴も絶対いるから。」
そう言ってヨウは、クラスの男子数人を睨んだ。睨まれた男子は縮こまって、そそくさとどこかへ走り去っていった。
「ヨウこそ。そんな格好見せられたら、ファンの女の子鼻血出しちゃうね。」
「そしたら優しくティッシュ渡すよ。」
笑いながらも、私の言葉を否定しないヨウ。でも本当、衣装が似合い過ぎてる。
紺がベースの布に、金の刺繍。普通なら衣装に負けてしまいそうだけど、それを着こなしてしまうのがヨウだ。
「これ、夢乃が縫ったんだろ?ちょっとは成長したんじゃない?」
「刺繍は私じゃないけどね。あんまり動いたら縫い目ほつれちゃうかも。亜子達が縫ったのと違って、ガタガタだから…」
恥ずかしくなって、私は下を向いた。
本当、もう少し器用なら良かったんだけどな…
そんな私の気持ちを知ってかヨウは、
「いやいや、これで十分だよ。ありがとな!」
きっと、こんな顔見せられたら女の子みんな溶けちゃうんだろうなって思う位、甘い声と笑顔で言ってくれたんだ。
本当に、ヨウは優しいな。
だから時々私は、ヨウに甘え過ぎなんじゃないかって反省するんだよ。
パレードが始まる前に一度だけ、琢斗の方に目をやる。
琢斗の衣装は亜子が作ったから、その衣装を着た琢斗はいつも以上に輝いて見えた。
だからその衣装を作った亜子に少しだけヤキモキを妬いてしまったけど、そんな気持ちは隠して私はパレードにのぞんだ。