なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?


――――――――


―――――――――――


パレードを終えるとうっすら汗が滲んで、化粧が落ちかかっていた。


この後琢斗と学祭回るのに、この顔は嫌だなぁ…


なんて思ってたら、




「琢斗と回るんでしょ?急いで化粧直してきなよ。」


亜子は私の脱いだ衣装を持ち上げ、そそくさとたたんでくれた。




「でも、まだ片付けとか…」


「いいからいいから。あとは私やっとくから、気にしないの!高校最後の学祭楽しまなきゃ。」


そう言って私の背中を押してくれる。




申し訳ない気持ちはあったけど、


「ありがとう…」


私は亜子の優しさに甘えることにした。




「あ、ちょっと待って。」


亜子は引き止め、私の髪の毛を軽く直して


「よし、可愛い可愛い。頑張れ!」



手の前でVサイン。
だから私もつられて


「行ってくるね!」


亜子にピースで返し、足早にかけていった。










私はこの時、目の前の自分の幸せでいっぱいいっぱいで、亜子がどんな顔して送り出してくれたかなんて気にする余裕がなかった。




たぶん私は、みんなに甘えてたんだ。だからみんなの気持ちも考えずに、傷つけていたことも沢山あったのかな…




でもそのことに気づくのは、もう少し先の話。



< 124 / 221 >

この作品をシェア

pagetop