なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
みんな帰ってて良かった。
話を聞いてくれたのが、亜子で良かった。
だって他の人なら
『いい恋できて幸せだったね』
きっとそう言って、私を慰めるんだ。
幸せ?
だとしたら、私のこの張り裂けそうな胸の痛みは何?
この苦しさも、幸せだっていうの…?
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「少しは落ち着いた?」
結局亜子は、私が泣き止むまでずっとそばにいてくれた。
気づけば外は日が暮れて、教室は夕日色に色を変えている。
「なんか、ごめんね…こんな時間まで付き合わせちゃって。」
私が濡れた目をこすって亜子に謝ると、
「いいんだよ。それにね、私この時間が凄く好きなの。」
亜子は私から離れて、窓に手をかける。
「空が赤と紫と水色で綺麗に混ざりあってる。この空見てると、“明日も晴れるよ"って言われてるみたいで元気が出るんだ。」
「だからむしろ、夢乃のおかげでこの空が見れてラッキーかな。」
そう言って振り向いた亜子が、夕日に照らされて凄く綺麗で
でもどこか儚いその表情は、秋の空そのままだった。