なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?




『迷い猫は悲しみをのせて……』




そんな歌い出しで始まるその曲。


マイナーなバンドだから、まだあまりメジャーになっていない。


俺達は黙ってその歌に耳を澄ましていた。





―――――――――――――――




行き場のない想いをのせて

何もない街に埋もれて

今日も迷い猫は歩いてる




………………




忘れられる恐怖に怯えて

真っ暗な街で震えて

今日も迷い猫はないている




………………




悲しみを隠して

悲しみをのせて

誰かに見つけてもらえる
その日まで……




………………


………………………


―――――――――――――――





歌詞を聴きながら、亜子のことを歌っているような曲だなぁ…と思う。




弱さを隠した猫と、亜子が重なる。




横を見ると、
















何故か亜子は泣いていた。




周りの景色が汚い物に思えるくらい、そこだけひとつの芸術みたいに、綺麗な顔で。










亜子。




猫のように小さな心に、お前はいったいどれだけの悲しみを隠しているんだろう……




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