なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
「…なんで泣いてるんだろ。」
曲が終わって冷静になった亜子は、
「らしくない…」
そう言って目をゴシゴシとこすった。
「たまにはいいんじゃね?」
「怒ったり泣いたり笑ったり、そんな亜子のが亜子らしいよ。」
そう言って俺は、どさくさに紛れて亜子の頭を引き寄せる。
「たまには俺にも弱さ見せてよ。ヨウだけじゃなくてさ。」
亜子を抱き寄せながら拗ねたように言う俺を、何故か今日は拒絶しない。
静かに俺の腕の中にいる亜子に、調子が狂う……
だあーーー、
くそっっ!!
昨日あれだけ考えた告白のセリフも、
かっこいいシチュエーションも、
亜子を目の前にしたら全部無意味だ――