なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
どうすればいい?
どうすれば伝わんだよ!
「亜子、こっち見ろよ。」
「目、逸らさないでよ…」
情けない俺の声が、演奏が終わって静かになった体育館裏に響く。
無理やりこっちを見るように仕向けているのに、亜子は目を逸らそうとしない。
その目が逆に俺を憐れんでるみたいに、亜子はそんな俺を酷く暗い瞳でじっと見つめていた。
俺の気持ち全部、分かってるとでもいうように。
――――なんで、どうして、俺は亜子を好きになった?
こんなに苦しくなるくらいなら、なんで…
いっそ無くなっちゃえばって
俺の中からいなくなれって思うのに
それなのに……
「亜子。」
鼓動が、早くなる。
好きなんだ。
たったこれだけの言葉なのに、どうしてこれまで言えなかったんだろう。
伝えろ。
今目の前にいるこいつに。
喉の奥が熱くなって声が出ないのも
こんなにも胸が苦しいのも
気持ちを伝える怖さも
お前を誰にも渡したくないと思うのも
全部、お前が好きだからだ。
だから、
伝えるんだ。