なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
「サボリみーっけ。」
振り返ると、そこにはいたずらっぽく笑う亜子。
「お前こそ…サボリだろ。」
「私はいいの!男側は人数余ってるみたいだし。」
「いい加減、女側で踊れよ。お前と踊りたくて毎年何人の男が泣いてると思ってんだよ。」
フォークダンスと言ったら、一年に一度の一大イベントで
気になるやつと踊ることを楽しみに、みんな順番を心待ちにしている。
でも亜子はそうではないらしい。
「なんで好き好んでどうでもいい男子と手繋がなきゃいけないのよ。それ言ったらヨウこそ、今頃泣いてるファンの子いっぱいいるよ。」
「今は、めんどいんだよね…ニコニコ笑顔振りまくのも、気のないやつらに気遣って話すのも。」
今までの俺からは、考えられない言葉。
だから亜子も
「ヨウでもそんなこと思うんだね。…って、今までが本音じゃなかったのか。」
「たまにはいいんじゃない?じゃないと何が本当で何が嘘か、わからなくなっちゃうよ。」
亜子らしい、
でも本当は俺が一番欲しかった言葉をくれるんだ。