なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
亜子は最初、ただ黙って肩を貸してくれていたけど
ハッキリしない俺にしばらくして、
「いざ手に入れちゃうと、いろんなものを疑って不安になるでしょ?でも、そんなのみんな同じ。」
「相手の気持ちを疑うのはしょうがないけどさ、自分の気持ちだけは疑っちゃダメだよ。」
「あんたが迷ってたら、夢乃はどうすればいいの?しっかりしなさいよ。あんたは夢乃の彼氏なんだから。」
そう強く言って、俺を諭す。
『彼氏』
この言葉を亜子に言われると、なんだかこの二文字がものすごく重い言葉のような気がした。
「…って、私も人のこと言えないか。一番ハッキリしないのは私かも。」
小さな声でそう呟いた亜子の姿に、
こいつはトーヤの告白を受け入れなかったのだとすぐに理解した。
お前、バカだろ。
「亜子、やっぱり俺ら似てるよな。」
いや、バカなのは俺も同じか…
「お前が幸せになれたら、俺も幸せになれる気がする。」
こいつにだけは幸せになって欲しい。
心から、そう思ってる。