なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
帰り道
私たちの間に言葉はなかったけど、
不思議と苦痛だなんて思わなかった。
「あ、そうだ。」
私は思い出したように鞄からそれを取り出し
「これ、明日みんなにも渡そうと思ってたんだけど…」
琢斗に差し出す。
それは、野球のバッドとボールをかたどった、手作りのマスコット。
「これは?」
「お守り。私にも何かできないかなぁって思って、作ったの。」
「でもひとりじゃ無理だったから、亜子にも手伝ってもらっちゃった。」
形は少しいびつだけど、琢斗のお守りは私が最後まで作った。
このお守りには、いろんな想いが詰まってる。
琢斗のお守りの中に入れたメモには、
『がんばれ』
この言葉のかわりに
『好きだよ』
の四文字。