なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
「トーヤ。」
「ん?」
「あんたに渡すものがある。」
そう言って亜子が渡してきたのは、手作りのマスコット。
「夢乃が野球部のみんなに作ってたから。あんたのはあくまで“ついで"。」
“ついで"ってとこを無駄に強調してくる亜子。
でも、
そのマスコットはちゃんとラケットとテニスボールの形になっていて、
ご丁寧に
『必勝』
の二文字が刺繍してあった。
裁縫が昔から得意な亜子だけど、それにしても時間をかけて作ってくれたことが分かる。
「ありがとう、亜子。」
ニヤニヤを必死に抑えて、亜子に心からのお礼を言う。
「たまには、幼なじみらしいことしないとね。」
『幼なじみ』という亜子の言葉に胸が痛くなったけど、
「ほんとに、嬉しいよ。サンキュー!亜子!!」
無理やりに笑顔を作って、俺はまた調子のいい遠哉を装った。