なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
9回表、
それまで沈黙していた打線に喝を入れるように
試合を決定づけるタイムリーを打ったのが、3番の琢斗。
“最後に結果を出すのは、誰よりもバッドを多く振った奴だ。"
いつかテレビで観た、どこかの監督の言葉を思い出す。
この3年間、誰よりもバッドを振って練習した奴を挙げるとするなら、
それは間違いなく琢斗だ。
その後、
俺と、同じ3年の5番の奴が続いて、貴重な2点が入った。
点数が取れれば、あとは俺がきっちり守るだけ。
大丈夫。
俺には琢斗がいる。
俺は琢斗のサインに一度も首をふらずに、思いっきりあいつのミットめがけてボールを投げる。
そして
三人目の打者のバッドが空をきり、
試合終了となった。