なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
コートに戻るけど、俺の足はびっくりするくらい重くて
もう動けないんじゃないかって、柄にもなくそんな弱気なことを思った。
その時…
「バカトーヤ!!」
コートの外から聞き覚えのある、
俺が一番聞きたかった声が聞こえた。
後ろを振り返るとやっぱりそこには、
…亜子がいた。
「ちょっと!あんな偉そうなこと言っといて、負けてるじゃない!!」
周りのポカーンとした空気なんてお構いなしで、亜子は俺を怒鳴りつける。
「私が来てやったんだから、絶対勝ちなさいよ!分かった?!バカトーヤ!」
なんかそんな亜子の様子がおかしくて、俺は笑いをこらえるのに必死だった。
でもおかげで力が抜け、身体が軽くなるのを感じた。