なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
本当は、聞きたかった。
『お前は琢斗が好きだろう?』
でも、俺は意気地なしだ。言ってしまえば、この関係が壊れてしまうのがわかっているから。
バカみたいなことならいくらでも言えるのに。
伝えたい言葉はここまできてるのに。
なんで
なんで
なんで俺は、本当に大事なことをお前に言わない…?
俺は、亜子から身体を離すと
「いや〜優勝しちゃったからさ、明日あたり俺様のかっこいい写真が新聞に載っちゃうかもね!」
「周りの女子がほっとかなくなったらどうしよう!」
またいつもみたいに、調子よく笑った。
友達として。
幼なじみとして。
…なぁ、
今の俺、
うまく笑えてる?
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表彰式やインタビュー中も、亜子は帰らず黙ってそれを見つめていた。
そして帰り道。
珍しく沈黙が続いて、お互い目も合わなかったけど
玄関のドアを開けるところで亜子は不意に振り返り
「私、琢斗のことなんて好きじゃないよ。」
そう言って、今まで見たことがないくらい、穏やかな顔で笑ったんだ。
その顔があまりに綺麗で、でもどこか儚げで、
怖くなった。
思わず、怯みそうになるくらいに。