なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?


「もしもし。」


「あっ、亜子?お前今どこにいんの?」


「外。これから図書館。」


「図書館?!」


間の抜けたヨウの声が、受話器越しに聞こえる。なんだか周りが騒がしいようで、肝心のヨウの声が少し聞きとりにくい。


「お前、今日何の日か分かってるんだろ?…試合、見にこないの?」


そうか、ヨウもトーヤの応援に行ってるんだ。通りで周りが騒がしいはずだ。


「行かないよ。ヨウが私の分まで応援してよ。」

私はさも、興味がないというように返事をする。

行かない、そう決めた私の決心は固かったから。


でもヨウは、受話器越しでもはっきり分かるくらい大きなため息を吐いて


「お前さ、意地はってんなよ。」


「…ほんとは分かってんだろ、あいつの気持ち。」


全てを知っているような、そんな口調で私を宥めるんだ。




なんなんだろうね、この男は。


時々怖くなるよ。全部を見透かされてるみたいで。


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