なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
たぶん、こいつはわかってるんだ。
トーヤの気持ちも、
私の気持ちも。
私がどうしたいのかも、
どうしたらいいのかも。
「ねぇ、ヨウ。あんた全部分かってるんでしょ?だから言うけど。」
「これが私の勘違いじゃなかったら、私は行けない。行く資格がない。」
だって、トーヤは大事な幼なじみ。それ以上でもそれ以下でもない。
「気持ちに応えられないなら、行くべきじゃないよ。」
私は琢斗が好きだと気づいてしまったから。
だからトーヤを好きになることはないよ、絶対に。
電話の向こうのヨウは無言で私の話を聞いてくれていたけど、
突然
「…めんどくせーな」
そう小さく呟いて私の話を遮った。
「資格があるとかないとか、ごちゃごちゃ考えてんなよ。」
「あいつはお前に来て欲しいの。幼なじみだから来てとか、友達だから来てとか、好きだから来てとか、そんな複雑なもんじゃないだろ。お前だから来て欲しいんだ。」
「…あいつこれから決勝だから。お前に見せれる最初で最後の試合になるかもしれない。最後くらいかっこつけさせてやれよ。」
そう言って、一方的に電話を切られてしまった。
…ほんとになんなの。
言葉はきついけど、周りのことをちゃんと見てる。ちゃんと考えて、必要な言葉をくれる。
ヨウらしいや。
あんたはどうしてこんなにも私の気持ちが分かるんだろう。
あいつの前世はきっと、占い師かエスパーだ。それか女の子を騙す詐欺師か。
って、それは今も変わらないか。
ちょっとお節介だけど。
ヨウ、ありがとう。
私は来た道を引き返し、駆け出した。
行くよ。
あいつのところへ。