なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?


そして私は思わず




「バカトーヤ!」


この重い空気を打ち破るように、声を張り上げていた。


自分で自分の行動にびっくりする。


近くで応援していたヨウ達が、そんな私の様子を見て笑っていたみたいだけど、この時はそれすら視界に入っていなかった。







コート上のトーヤは私に気づき、一瞬こっちを見てフッと笑ったけど


すぐに真剣な顔で前を向いた。


いつもはふざけたあいつの顔しか見ていないから、その顔に不覚にもドキドキしそうになる。


でもそんなこと言ったらまたあいつは調子にのっちゃうから、絶対あいつには内緒。



――――――――


タイブレイク。


あと一ポイントで、あいつの勝ち。


『頑張って、トーヤ。』


心の中で、叫ぶ。




このときだけはたぶん、トーヤのことを考えていたと思うよ。


幼なじみとしてとか、


友達としてとか、


そんなの関係なく、頑張ってるあんたのことをただ、応援したくなったの。


これは、琢斗に対する気持ちとは違うよね…?




――――――――――


もう一度強く


『絶対勝って、トーヤ!』


そう心の中で祈る。



< 77 / 221 >

この作品をシェア

pagetop