なんで、みんな誰かの一番になれないんだろ?
そして私は思わず
「バカトーヤ!」
この重い空気を打ち破るように、声を張り上げていた。
自分で自分の行動にびっくりする。
近くで応援していたヨウ達が、そんな私の様子を見て笑っていたみたいだけど、この時はそれすら視界に入っていなかった。
コート上のトーヤは私に気づき、一瞬こっちを見てフッと笑ったけど
すぐに真剣な顔で前を向いた。
いつもはふざけたあいつの顔しか見ていないから、その顔に不覚にもドキドキしそうになる。
でもそんなこと言ったらまたあいつは調子にのっちゃうから、絶対あいつには内緒。
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タイブレイク。
あと一ポイントで、あいつの勝ち。
『頑張って、トーヤ。』
心の中で、叫ぶ。
このときだけはたぶん、トーヤのことを考えていたと思うよ。
幼なじみとしてとか、
友達としてとか、
そんなの関係なく、頑張ってるあんたのことをただ、応援したくなったの。
これは、琢斗に対する気持ちとは違うよね…?
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もう一度強く
『絶対勝って、トーヤ!』
そう心の中で祈る。