【短篇】私と僕。~逆らっちゃダメ~
「……………っ。」


気付かれまいと、陰に隠れた。


いけないと知りつつも、会話を盗み聞いた。


「…………。」


女の子は黙ったまま。


「俺に話って何?」


ケンちゃんは、口を開いた。


いつもの『僕』じゃなくて『俺』を主語にして。

「…あの。す…好きなんです。付き合ってください。今は、誰とも付き合ってないんでしょ?」


告白…。


ケンちゃんがよく告白されるのは知っていた。


けど…。


現場を見たら、胸が苦しくなった。


チクン。


風船に針が刺されて、パンッて割れるような痛みが私を襲った。


告白現場をこれ以上は見れない…。


私は、かばんを持って自分の教室へと戻った。


『私は何も見なかった』そう言い聞かせて。


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