【短篇】私と僕。~逆らっちゃダメ~
ぐいっ。


突然、体が前へと引っ張られた。


右手はケンちゃんによって力強く握られていた。

少し痛いくらいに。


「…っ…た。」


小さな声で、痛いって言ったけど聞こえなかったみたい。


人だかりの方へと、引っ張られていく。


手は、またしっとりと濡れた。


心臓は、またうるさくなった。


急に足が止まった。


「見て。見て。猫。」


くるっと私を見て猫を指さす。


「はぁ…はぁ…。つか…れたぁ…。」


私は息切れてそれどころじゃなかった。


「あっ…ごめん。疲れちゃった?座る?」


左右に首をふった。


「はぁ…て…。」


「て?」


「…手…痛い…。」

まだ、息が調わない声で言った。

ケンちゃんは、握っている手を見た。


気がついたのか握る力が弱くなった。


「ごごご…ごめん!!力加減分からなくて…。ごめんね。」


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