ALTERNATIVE Ver.0.5
女は、深夜のなか卯で食券を買い間違えた。

女は親子どんぶりが食べたかった。

親子どんぶりは、きつねうどんの下か、

まぎらわしいな

きつねうどんを押しちゃいそうだな

この配列だと、絶対間違う人もいるだろうな。

何度も自分に言い聞かせ間違わないように身長に何度も確認した。

これが、大人だ。

きつねうどん。

押しちゃダメだな。

その下だもんな。

間違えないようにしなくちゃ、な。ガチャ。


きつねうどん。

きつねうどんの食券を眺め、強盗を決意する。

……て、いう。


男は目の前の片膝をついて拳を床に叩き付けて、うなだれる女をみたび見た。


うん。

ここまでは悔しがらないね。

店員に言えばいいもんね。

「すいません間違えました」と。


でも、俺は食べちゃうね。と男は思った。


この男はこういうとき“食べるタイプ”なのだ。


き つ ね う ど ん を た べ て し ま う の だ 。


自分の犯したミステイクなんてものは自己責任だ。

あやまればすむ、他人が何とかしてくれる。

人間とは間違える生き物。いやいや機械にだってある。

そういう考えだから簡単にミスばかりする。


あやまってすむという裏に、反省というものはない。

人は頭を打っても痛くないのなら、どうせまた同じ場所で頭をぶつける。

それでなくても、人間というモノは同じ間違いを犯しがちなんだ。

そうだろう?


涙とともにご飯をおかずなしに食べたことを男は思い出した。

じっさいは、そんなことは一度もないのだが、親子丼を食べたかったとなみだながらにきつねうどんをすすることで見えてくる明日はあると確信する。


男は目の前の同じポーズのままの女を見た。


じゃぁ

こういうのは、


どうだろうか?
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