ALTERNATIVE Ver.0.5
あとがきにかえて

さらに、ひとつのエピソード。

気が立って眠れずに布団から飛び出すと窓の外がなにやら赤い。

道路を挟んで斜め向かいにある工場から火が出ている。燃えている。めんどくさい。

電話しないとな、と道を挟んで向こう側なのでべつにどうでもいいけどなと思っていると、作業服を着たわりと年配の背の小さな男二人組がなにやらわめきもって工場から出てきて火のついた新聞紙をサッカーボールのように蹴っている。



ああ、工場の人なのかな、通報してくれるだろう、かわいそうに工場が燃えたらあしたから仕事がないよな。休みでも金はもらえるのはそれはそれでいいのかな。なんておもっていると、どうやら火をつけたのは、この二人なのかなとか思い。そういう風に思いながらよくよく見ると蹴りながら、何かの悪口を叫んでる。聞き取りたくもない。

ああ、格差社会だからな

なんかヤケになってるのかな、放火は結構罪が重いのに、うちの実家には迷惑をかけないでくれよ、いや、べつに燃えてもいいや、燃やしてくれてもかまわないさ。


世界に神様なんていないのだろう。こんな理不尽な二人がつけた炎を消せやしないのだからな。

なんなら俺が神になってやろうか?


あんなおっさん二人くらいいつでも殺してやるよ……ってキラきどりか。

と、ドアを開けて表に出てみた。

なにやら世の中の不平不満を叫ぶ男二人と自分の黒いバイクを挟んで向かい合い目があった。


とても充実した時間が流れ、瞬間的に汗をかき緊張した濃密な時間の後に二人は俺に深く関わることなく東へと進んでいった。

工場は燃えている。

俺には何の関係もない。

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