++外伝/偉大な緑の協力者~『選択』~++
第十章 自分自身の姿を映すもの

瞳の中の鏡

 アザムが、薬の種類を見て副作用を止めるために必要な薬を割り出す。
ベリルはアザムに瓶を渡し見せている間に、こちらに向っている回収用車両に色々と報告と命令をしている。
 アザムが必要な薬を直ぐに割り出すとベリルに伝えている。
 
 ベリルがアザムに瓶を渡した理由は“試した”のか、回収車両への電話が先立ったためかは分らない。

 ただ、複数の系統名から、代用薬も含めての品名までをあげた事は感心できた。



「昔話と現実は違う……それは分かるな?」

 厳しい瞳でベリルはラトを見た時、小さく笑って頷いただけで精神的打撃が大きかった事が見ても分かった。

 その後直ぐにシーツを被ったままだが、意識がかなり回復しているレイの足の鍵を二本の針を使いこじ開けている。


 そのベリルの姿を見つめて、一度苦しそうな息遣いの深い呼吸をしたら、小さく語りだす。


「解っています。ただ一つだけ……‘スピナ’は棘ですが本当は違います。元々は本物と変わらないくらいの輝きの宝石‘スピネル’の意味。未来のある子ども達への言葉が元だった……――」
「――それも後で話してくれたらいい。お前はこっちで、全てを喋って貰うのだから」


 初めザザ達とラトの格好が全く違う事自体が疑問だった。しかし最後の二人の会話と今の話でベリルには、噂話と推測できる内容が一つあった。

「承知しています。全てをお話し……償います」

 ベリルはその言葉に眉を顰めるような瞳をする。そして直ぐに鍵は外れレイから鎖を外してやると、近くに立っていたアザムがしゃがみ込み語りかける。
 
「……と、父さん! 僕だよ分かる?」
「あぁ……アザム――」

 アザムはレイに思い切りしがみついた。さっきの様な恐怖心などはかなり無くなってはいるがまだ何かに怯えている感じがするので、処置と二、三日は安静が必要だろうとベリルは考えている。
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