青空の向こう
 
「……」 
 
不機嫌なまま、私の反論には応えず睨まれ、気まずい沈黙が続いた。 
 
「…迷惑ならどくけど?」 
 
睨まれたままの状態がイヤで、今回はここを去ろうという結論にいたり立ち上がると、まだ私を睨んだままの相手に聞いてみたのだが。 
 
「…」 
 
他人とは関わりたくないのだろう、返事はない。 
 
そっちから声かけて来たくせに…。 
 
荒んだ、冷めたような色を含んだその瞳、まるであの日の私の瞳を見ているみたいだ。 
 
辛くて、苦しくて、自分自身にはどうすることもできなくて。 
 
ただただ自分の運命を呪うしかできない。 
 
すべてを諦め、やりきれない爆発しそうな自分の気持ち、誰かに当たりぶつけてしまいたい衝動を、他人を蔑むことで抑える。 
 
そんな冷酷な瞳に親近感が湧いてしまう。 
 
「…ハァ 別に迷惑なんて言ってねーし いたいなら好きなだけいりゃ良いだろ」 
 
ようやく言葉を発したと思えば感情の無い声色で返され、当人は屋上を去ろうとドアノブに手を掛けようとしていた。 
 
「…あんたもここが好きなんでしょ? それならいればいいじゃない!!」 
 
あんな失礼な人さっさと立ち去れば良いと思っていたのに、気づけば止めていた。
 
きっとあの冷たい瞳のせいよ。 
 
「…」 
 
相手からの返事はないまま。 
 
そのまま屋上を去って行った。 
 
本当イヤなやつ。 
 
気を取り直してまた寝そべると真っ青な空を見る。 
 
トゲトゲした気持ちがほんわかしていくのが心地良くて、いつの間にか眠りの世界への扉を開いてしまった。 

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