青空の向こう
遅刻確定だからとはいえ、ノロノロしていられない。 
 
「それじゃ 教室でね!!」 
 
上靴に履き替えトイレへ向けて走ろうとしたら腕をつかまれた。  
 
驚きながら夏季へ振りかえるとにっこりと 
 
「私も美空に付き添うよ」 
 
なんて言って来た。 
 
いつもの夏季なら私に付き添わないで教室へ行くのになぁ 
 
なんて不振がってるのも時間の無駄になる。 
 
「夏季が付き添うなんて 珍しいこともあるんだね… 時間もったいないから早く行こ!!」 
 
怪訝そうに夏季を伺う私にはお構いなしの夏季は頷くと私と一緒にトイレへと急いだ。 
 
 
「夏季はトイレ入んないの?」 
 
付き添うって事は夏季もトイレに入りたいのだとばかり思っていたんだけどな…。 
 
「特に用は無いけど!!なんで?」 
 
どうやら違うらしい。 
 
鏡の前に立ち身だしなみのチェックを始めた夏季を置いて。 
 
「うう~ん なんとなく聞いてみただけ」 
 
夏季ってば本当にたまに謎な行動するんだよね。 
 
まぁ 良いけど。 
 
「私はトイレ入るね 夏季は教室へ先行ってても良いからね」 
 
急いでトイレへ入り扉をパタンと閉め鍵もかけた。 
 
鼻からティッシュを取り出すと先のほうが真っ赤になっていた。 
 
それをマジマジと見ながら、やり切れない思いに襲われた。 
 
私はいつになったら楽になれるんだろう… 
 
「……ハァ」 
 
思い耽っていても仕方ない、先から途中まで真っ赤に染まったそれをトイレへ落として流した。  
念のため鼻に触れてみるが、完全に血は止まっているようだった。 
 
トイレから出ると。 
 
「随分長かったね 大のほう?」 
 
悪戯を含んだ眼差しでからかうように言って来た夏季を見たら、さっきまで荒んでいた気持ちがほんの少し穏やかになった気がした。
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