青空の向こう
ガタン 
 
教室への扉を開くと今の数学の授業の受け持ちの柳原先生とクラスメート全員の視線が私達へ向けられ。 
 
「日向!!桜井!!今何時だと思ってるんだ!!!もう授業はとっくに始まってるぞ!!」 
 
怒りを含んだ大きな声にビクっとして固まる私。 
 
でも夏季は違った。 
 
「すみません。美空が登校中に体調不良を訴えたので 少し休ませてたら遅刻してしまいました」 
 
夏季ってば、毅然とした態度でそう言ってのけたんだ。 
 
夏季さん? 
 
あなた女優になれるよ。 
 
うん 絶対なれるよ。 
 
いきなり夏季に肘でつつかれて、私は、ハっと我に返った。 
 
「はい…私のせいです!すみません」 
 
まぁ…私が寝坊して、しかも階段から転げ落ちなければ遅刻しなかったし、みんなに迷惑かけることはなかったんだし…。 
 
そんな思考のままとりあえず頭を下げた。 
 
「…日向は席に着け!! 桜井…体調のほうは大丈夫なのか?」 
 
怒りの含んだ声から感情の読みとれない低め声が私に問いかけて来た。 
 
ふっと夏季を見ると、もう席に着いて怪しく頬笑みながら私を見ている。 
 
夏季の奴…ずるいなぁ。 
 
「………ハァ 先生 まだ体調良くならないので保健室行っても良いですか?」 
 
少し辛そうにして言うと柳原先生は困惑しながらも。 
 
「本当に大丈夫なのか?早退するか?」 
 
なんて慌て始めた。 
 
早退なんてしたらお母さんに心配かけちゃうからできないって。 
 
「いえ 早退はしません 少し休めば大丈夫です」 
 
私も女優になれるかも。 
なんて思っていると。 
 
「わかった 保健室に行け だが体調が思わしくないなら早退するんだぞ?」 
 
「…はい」 
 
と返事しつつ、内心は浮かれていた。 
 
教室を出る際、夏季を見ると何か言いたげに睨まれたけど。 
 
夏季のせいだもん。 
 
なんて思いながら、教室を出た。
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