冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「……なんなんだ、一体…」
俺は机の上から【BLACK DEVIL】の紙箱を手に取り、
同じ黒に金色のラインが入った煙草を一本口にくわえると、
鈍色のライターで火を点けた。
ジジ、と燃え、紅く火がともる。
甘い匂いが、辺りを包む。
深く吸い込み、
一つ、大きな溜め息とともに、
煙が舞い上がった。
窓際の壁に寄り掛かり、
その煙りの行方をぼんやり眺めていると、
ふと、視界の端に窓の外が映る。
そこには、眩しい程の笑顔があった。