冷たい雨に咲く紅い花【前篇】

思わず、自分の眼を疑う。

だが、そこには確かに眩しい笑顔と笑い声に溢れていた。


窓の外、庭で静音と何やら楽しそうにしている、


実織の姿があった。



白いドレスを身にまとい、
庭に咲く彩り豊かなの花の中を楽しそうに走る、実織の姿。


その後ろでは、静音が何かいいながら実織のあとを追っていた。



ドレスがひるがえるのも、
結い上げた髪が風になびくのも気にせず、

実織は後ろを追う静音を時々振り返りながら、走っていた。


 零れる、笑顔。
 溢れる、笑い声。


驚く程、実織は生き生きとしていた。



昨夜は震え、
泣きそうだったのにーー……。



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