冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
今まで俺とは無縁のものが、
今はすぐ近くに、
こんなにも近くに、溢れていた。
そして、窓に映った自分の表情に俺は驚いた。
さっきまで滑稽だと情けない表情だった俺が、
今、窓に映る俺の表情はほころんでいた。
どういうことだ?
なぜーー?
思わず、掌を自分の顔に持っていくと、
「ぁつ!」
くわえていた煙草の火が掌に軽くあたり、
掌をブン、と振るーー
ガン、
「って!」
今度は、机の角に手の甲をぶつけた……。