冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
ー静音ー
†
「み、実織様、そんなに走られてはドレスが汚れてしまいます」
前を走る実織様を追って私がそう言うと、
結い上げた髪の後れ毛がふわりと舞い、
可愛らしい実織様の表情が、
しまった! といった表情に変わった。
「あっ!そうだった!」
実織様は慌てて白いドレスの裾を上げ、
くるりと回りドレスの様子を見回した。
一目瞭然、白いドレスにはいつのまにか緑の葉や黄色の花粉、
彩り豊かな花びらが幾つか咲いていた。
「ふふ、本当の花のドレスのようですね」
実織様の可愛らしさに、
思わず笑いが零れる。
けれど、しまった、と表情を引き締めた。
「すみません、笑ったりして……」
私としたことがーー