冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
そう、そうか……。
「実織様が、冷たく凍り付いていた紘夜様の心を解かしてくれたのですね」
「えっ?」
私の呟いた言葉に、意味が分からないといった表情の実織様が、
振り返る。
本当にくるくると表情がよく変わる。
その様子を見ていると、こちらまで表情が和らぐようーー。
「いえ、なんでもありません。
実織様がここにいらしてよかったと、
そう思ったのです」
「えーー?でも無理矢理連れてこられたんですよ?
巻き髪ってだけで」
今度は不満そうに、
ぷうーと頬を膨らませ、怒ったような表情になる。
でも、そんな表情さえも可愛らしく見えてしまう。