冷たい雨に咲く紅い花【前篇】

「そうだよな、俺に見つかったら大変だよなぁ」

「そうだよ、紘夜にーーって、えっ!」


突然頭上から聴こえてきた低い声に、
実織様が驚いて顔を上げる。



あぁ…作戦失敗です。
実織様……。




「こっ、紘夜!」

「おぉーいい度胸だな、実織。
俺の部屋に忍び込もうなんて」


少し開いた扉、
部屋の中から覗く紘夜様の表情に、実織様も私も固まった。



バタン

紘夜様は私達のいる廊下に出てくると、
自室の扉を閉めた。

しゃがみ込んでいる実織様と私の前に立ちはだかる、長身の紘夜様。


き、気まずい雰囲気です……。


< 124 / 413 >

この作品をシェア

pagetop