冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「おい、じゃあ、行くぞ」
「ちょっと待って!パーティーでも、〝おい〟とか〝お前〟って呼ぶんじゃないでしょうね!?」
私は白のふわふわショールを羽織りながら、紘夜をそう呼び止めると、
紘夜は振り返る。
「行こうか、実織」
そう言って、手を差し出した。
な、なによ…
調子狂うじゃない……
きっと、
今の私は、
恥ずかしいくらい
顔が赤いと思う。
紘夜は、ためらっている私の手を引き寄せると、
しっかりと握りしめた。
その時少しだけ、
紘夜が、微笑んだような
気がした。