冷たい雨に咲く紅い花【前篇】

「おい、じゃあ、行くぞ」

「ちょっと待って!パーティーでも、〝おい〟とか〝お前〟って呼ぶんじゃないでしょうね!?」

私は白のふわふわショールを羽織りながら、紘夜をそう呼び止めると、


紘夜は振り返る。



「行こうか、実織」

そう言って、手を差し出した。



な、なによ…
調子狂うじゃない……



きっと、
今の私は、

恥ずかしいくらい
顔が赤いと思う。



紘夜は、ためらっている私の手を引き寄せると、
しっかりと握りしめた。


その時少しだけ、

紘夜が、微笑んだような


気がした。



< 135 / 413 >

この作品をシェア

pagetop