冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
ー実織ー
†
「…ーだから、客には余興の花火だとでも伝えろ」
背後の豪邸内から聴こえた男の人の声に、
ドキッとした。
頭上の窓の近くから声がした。
どうやら、
私が潜む樹陰の背後にあるお屋敷内の廊下の隅で、
誰かが話してるみたいだった。
「まったく、こんな時に銃撃だなんて。なにやってんだ、紘夜のヤツは」
近づく声。
紘夜?
紘夜が、どうかしたの?
紘夜の名が聴こえ、
途端に不安になる。
鼓動が速くなり、
体中に響くようだった。