冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「紘夜!紘夜ーー!」

何度、名を呼んでも、

振り返らない。



どんな表情でいるのかも分からない。




でも、

煙がーー



紘夜の後ろ姿を、煙草の煙が包んだ。
微かに香る、甘い匂い。


それは、

区切りの、合図。




これで、お終い。

そういうこと?



ねぇ、紘夜



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