冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
見渡したけど、
どこにも紘夜の姿はなく、
高齢の運転手さんが前をずっと見ているだけ。
あたりまえだ、
私しか、乗ってないんだからーー
そう思って、自分の体を抱えて、
気付いた。
紘夜の、
黒いジャケット。
私が羽織っている紘夜のジャケットから、
紘夜の煙草の匂いが、した。
「…紘…夜…紘夜…」
羽織ったジャケットにしがみついて、
私は、泣き続けた。
どこにも紘夜の姿はなく、
高齢の運転手さんが前をずっと見ているだけ。
あたりまえだ、
私しか、乗ってないんだからーー
そう思って、自分の体を抱えて、
気付いた。
紘夜の、
黒いジャケット。
私が羽織っている紘夜のジャケットから、
紘夜の煙草の匂いが、した。
「…紘…夜…紘夜…」
羽織ったジャケットにしがみついて、
私は、泣き続けた。