冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
父親の遺志を継ぐ事に、
抵抗は無かった。
唯一、
自分と父親を繋いでくれる物の様に、思えたから。
例えそれが
他人の血を
自分の血を
流す、
罪深きものだとしてもーーー。
予想外だったのは、
あの冷たい雨の日に、
あのオンナに逢った事。
いや、通り過ぎる事も出来た。
だが、
彼女があまりに楽しそうに話すから、
彼女があまりに楽しそうに笑うから、
気になって、
俺は手をさし出した。