冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
ー実織ー
†
自宅に着いた私は、
驚く事ばかりだった。
「おぅ、お帰り実織。体の調子は大丈夫か?」
私を出迎えたのは、
ジュン兄の素っ気ないけど、あたたかくて優しい言葉。
「…う、うん。た、ただいま…」
「なんだ、ずいぶん綺麗な格好してんな」
「え…うん、ちょっと…」
てっきり、ジュン兄のことだから怒られるかと思った。
今までどこで何してた!
とか
人様に迷惑かけて何やってんだ!
とか
一週間帰らなかったんだから、
色々、聞く理由はあるはず。
それなのに、
あのジュン兄が、この落ち着いた様子って、
どういうこと?