冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「って、さっきから何してんだよ?実織」
「なにって、制服少しでも乾かそうと…」
「んなことで乾くか、ボケ」
ぼ、ボケ…って、
「ひどっ…」
「いーから、乗れ。家まで送るから」
「でも…」
私が躊躇してると、
「じゃあ、服脱いで乗るか?」
紘夜が煙草をくわえたまま、口の端を上げて笑う。
「なっ…!」
言い返そうと、顔を上げると、
ふわり、
体が浮いた。
紘夜が私を抱え、車の助手席に座らせる。
紘夜の体が覆い被さる様に、
体半分、車の中に入った私。
私のすぐ近く、紘夜の表情。
穏やかで優しいその漆黒の眼から、
そらせない。