冷たい雨に咲く紅い花【前篇】

  †

バンッ


力強くバルコニーと部屋を区切る立派な窓を蹴り開けると、
男は、私を抱えベッドに向かう。

そして、


ドサッと、
私をベッドに放り投げた。


「ずいぶんと楽しませてくれる女だな」

呆れた様に、男は呟く。


「死にたいのか?あんな事して」

溜め息と共に零れる言葉。


「し、死にたくないしっ、愛人もイヤだからっ、逃げようとしたんじゃない!」

まだ微かに震える声で、私は反論する。


「愛人?」

不思議そうな表情をした後、何かに気付いたかの様に男はフッ、と笑った。

そして、ベッドに放り投げた私に、近付いて来る。


「こっ、来ないで!」

逃げ出したいけど、男の漆黒の目が私を捕え、

動けない。


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