冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「ちょ、ちょっと…ジュン兄?なんで?」

なんで、
怒ってるの?


「いいから!お前はもう真影と会うな、いいな!」

なんで、
そんなこというの?


「やだよ、そんなことジュン兄の言葉でもきけない!」


「いーから早く部屋に行け、実織!」


なんで?

なんで?


「紘夜!」

閉まりそうな扉の向こう、静かに立つ紘夜の名を、すがるように呼ぶ。



「…待ってろ、必ず会いにいく」

静かに告げる紘夜。


でもその表情は、
どこか儚げで、哀しそうだった。




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