冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「あいつはダメだ」
ジュン兄は、冷たく言い放つ。
いつもイジワルで、口は悪いけど、
でも、
愛情を感じた。
しょうがないヤツだな、実織は…
って、
ジュン兄は優しさを感じた。
でも、
今は、違う。
冷たい、
ただ否定するだけの、
冷たい言葉。
「いいな、もう真影と会うなよ」
「ジュン兄!」
私の呼ぶ声に振り返ることなく、
ジュン兄は2階の自分の部屋に入ってしまった。
ハッ、と気づいて
私が外に出た時には、
もう、
紘夜の姿も、
紘夜の黒い車も、
どこにも
みあたらなかった。