冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
ー紘夜ー
†
「お帰りなさいませ、紘夜様」
「ん?あ、あぁ」
出迎えた静音の声に、
どこか上の空で答えると、
「実織様と何かありました?」
俺の黒いコートを受け取る静音が、心配そうに尋ねる。
「あ、いや…。実織と、ってわけじゃ…」
ん?
待てよ…
「静音、なんで俺が実織と会ったって、分かった?」
ここ最近、
静音と会うことはなかった。
それに、
実織と再び会うことが出来たのは、ついさっきのことだ。
なのにーー…