冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「俺…違う、か?」
「違いますよ、全然。雰囲気がやわらかいです。
…でも、どこか上の空…ですね」
静音にはホント敵わないな。
きっと、
静音が実織を尋ねたのも、
静音の計算、だろう。
だが
「…新たな敵、出現ってとこか」
苦笑を浮かべ、
さっきの達花準の事を思い出す。
「ライバル出現、ですか?」
静音は驚きつつも、どこか身を乗り出すような、
そんな感じだった。
ライバル…
実織の兄となると、
ある意味、そうかもしれない。
「…でも、そうなると俺は燃えるタチでね」
もう離さないと、
そう、決めた。
実織を離したくないと、
そう思ったからーー…