冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
それが、怖さからなのか
それとも、
その男の黒い目に惹かれたからなのか、
分からない。
男はベッドに腰掛けると、私に顔を近付けて、
「そんなに嫌か? 俺の女になれば、何でも手に入るぞ」
耳元で囁く。
オトコの低く艶っぽい声に
思わず、身体がビクッと震えた。
それは、
怖さからでも、
寒さからでもないことは、
分かった。
でも、
ここで挫けるワケにはいかない!
そう思い、手元のシーツをぎゅっ、と握りしめ、
「……何でも手に入るなんて、
いらないものが増えるだけじゃない?」
私は、キッと目線をあげた。